不完全な国勢調査、5日間の旅路③

②の続き…


誤り

サンチャウン区(ヤンゴン)にある田舎出身の女性12人が暮らす寮で4月2日に国勢調査が行われた際に「調査対象者が多くて仕事が終わらないから、実家に戻って国勢調査を受けるようにしなさい」と調査員から言われたことを、自身が遭遇したモン族のドーウェーウェーソーが言った。

国勢調査をしに来た時、12人中2人しかいなかったため、「あとで調査しにきてください」とお願いしたが、調査員は拒否し、2人にだけインタビューをし、その2人の回答から12人全員のデータを記入してしまったこと、また、12人のうち多くの人が仕事に就いていると言ったにも関わらず、「求職中と記入するほうが簡単だ」(=仕事をしているとなると、どんな職か、等さらに質問を重ねなければならない)と言い、“求職中”と記入させられたことを、彼女らは証言した。

「他の人について「大卒ですか、高卒ですか」など聞かれても、同じ家に住んではいるが、知るはずもない。同郷の人はたった1人だけで、その人のことは答えられても、あとの人のことは予測しながら記入しなければならなかった」と彼女らは言った。

ヤンゴンのようにヤンゴン土着の民族と他の民族、様々な宗教を信仰する人がまじり合って住んでいるようなところで調査員が根気強く正確に調査が行えて初めて、正しいデータが手に入れられるだろう、ということを、国勢調査を受けた人々は感じている。

国勢調査の基準時間は3月29日の真夜中と言っていたが、4月1日に外国から来た人も国勢調査に入れてしまった」とカチンピースネットワークの協議長ドークンジャーは言った。

ムスリムに対して国勢調査を行ったところの一部で民族と宗教をインタビューせず調査を終えたこと、また、国勢調査用の正式な紙でなく、役所が用意しておいた非公式的な書類に記入させたこと、などの問題に直面していることをマンダレー上部に住んでいるパティ族のウーゾーミントゥンが言った。

一部の人が言うには、ビルマ人というだけで、宗教を聞くことなく“仏教”と記入してしまったことも多かったこと、135の公定民族に含まれない人々は914(その他)に記入する際に民族名を記号(914)記入欄の横に記入しなければならないのに、記入漏れがあったこと、をそれらの問題に遭遇した人々が言った。


④につづく…

不完全な国勢調査、5日間の旅路②

501(国勢調査におけるビルマ族のコード番号)と国勢調査

KIA(カチン独立軍)が支配するカチン州とシャン州北部の一部地域では国勢調査を行うことをKIAが禁止したため、調査を実施できないことを中央国勢委員会が明らかにした。
国勢調査の実施において、民族のコード番号やその他データが間違って記入されるなど、様々な問題に直面していることが、国勢調査を受けた人々のインタビューから明らかになった。
「ダウェー族(コード番号502)なのに501(ビルマ族)と記入してしまった。ダウェーの番号は501だ!とダウェーの団体が言っていたのを聞いたんだ。なんで501になるのかという理由までは聞かなかった。」などと、ダウェー族では5人もの人々が501(ビルマ族)と間違って記入してしまっていたことをダウェー族のある人が告白した。
カチン州のバンモーとインドージー地域にいるシャンニー族に対し、シャンニー族として国勢調査で記入しないようKIA(カチン独立軍)が圧力をかけたため、KIAの支配地域に住んでいる3万人以上のシャンニーが国勢調査を受けられなかった旨をタイレン(シャンニーの自称)民族発展党の党首であるウーソーウィントゥンが述べた。
シャンニーは、公式に認定されている135の少数民族に含まれないためシャンニーはコード番号を持たない。国勢調査を行った際に、シャンニーをコード番号914(その他)でなく、シャン族のコード801に間違って記入してしまったため、修正しなければならなかったことを自身がその状態に出くわした人々が述べた。
914というコードはミャンマーの公定民族135に含まれない民族と、外国人のために存在する。
国勢調査員が135の少数民族に含まれない人々を914と記入することを知らなかったため、調査対象さが回答したままに記入し集計したところ、間違いが生じている。田舎の人ならばなおさらそうなる。」とウーソーウィントゥン(タイレン民族発展党の党首)が言った。

ゾミ民族も個別のコードを持たないため914(その他)に記入する、という計画に対し、ある国会議員は「914に記入したら外国人ということになってしまう」と言ってその計画を阻止しようとしている、とゾミ民主連盟の党首プーカンリャンは言った。
同様にマンダレーの地元民の一部では、民族名を聞かれずにビルマ族のコード501に記入してしまったことを話した。
ベイ地域でも国勢調査をするさいにベイ族と答えたのに、ベイ族のコード503でなく、501(ビルマ族)と記入されたことを一部の地域住民から知った。

そのため別日に区長のもとに行ってコードが間違って記入されたことを伝え、正しく修正した、と彼らは述べた。

 

③へつづく…

不完全な国勢調査、5日間の旅①

Voice LOCAL(2014年4月第2週発行)

 

全国国勢調査の集計は4月3日で5日経ち、どのように幕を閉じるのか、全員が注目している。

 

30年ぶりに行われる国勢調査では、一部地域で調査ができなかったこと、データの一部が間違って調査されていたこと、一部地域で国勢調査が行われる前にでもが起こったことなど、様々な問題に出くわしている。

3月2日までの4日間で計2,035,001戸もの家庭に調査し終えたことを中央国勢調査委員会が発表した。国勢調査員を計111,254人雇用して3月30日から4月10日までの12日間、統計を行った。

国勢調査を行うために3月29日の深夜を基準時間として定め、基準時間内にミャンマーの領土にいる人全員を国勢調査の対象とし、基準時間後に誕生する人は含めない。国勢調査の実施においては3月29日の夜にいる場所で行われる。

 

西部の問題

ラカイン州では国勢調査の実施につき、民族名としてロヒンギャと記入する権利がないために、ベンガル人(この記事においては一貫してロヒンギャの事を指す)は国勢調査を受けずにデモを行っている。

ベンガル人が住む家では「ロヒンギャと認められたら調査を受ける」「信仰する宗教はイスラーム ロヒンギャ914(国勢調査にて、少数民族135の中に認定されていない民族または外国人が記入するコード番号)」などの内容が書かれた紙を貼って国勢調査に対してデモを行っていることが現地の調査員からわかった。

「何民族ですか、と質問した。ロヒンギャと回答されたら、ありがとうございました、とだけ言ってすぐに家から出てきた。とマウンドーで国勢調査を行っているある調査員が言った。

ラカイン州仏教徒の人々は、国勢調査において政府が当初、ベンガル人ロヒンギャと記入することを許可したことに対し、ラカイン州でデモを実施、住居にて仏教の旗を揚げるほか、「国勢調査をこの家ではボイコットするので調査を絶対にしに来ないで」などの内容の神を住居に貼ってストライキした。

このようにボイコットを受けて、国勢調査初日の3月30日の午前に、ロヒンギャという用語の使用を認めない旨をラカイン州政府が正式に発表したため、仏教徒の住民はストライキを中止した。

ブーディータウンでベンガル人が住んでいる6つの村で国勢調査を実施したところ、村長と10人家族のみがベンガル人として国勢調査を受けたことをブーディータウンの調査員が述べた。

同様にシットウェーを含むベンガル人が住む村々でロヒンギャと記入する権利がないためにデモが行われた。

国勢調査員はロヒンギャと記入する許可は降ろさないと上司が言うのだと言っていた。ロヒンギャが認められないなら調査は受けない」とシットウェーのベンガル人が暮らすアナウッサンピャという村の長老であるウーマウンマウンティンが3月20日に言った。

国勢調査を受ける人々の希望通りに民族名を記入していい、と国勢調査の実施前に政府が正式に宣言したが、実施後になって変更され、ロヒンギャと記入することを禁止したために問題が生じたのだ、とシットウェーのベンガル人居住区であるテーチャウン村のウーマウンマウンが述べた。

ベンガル人の村々、地区の一軒一軒をまわって「ロヒンギャと記入したら、1982年の国籍法に反する」と国勢調査委員会の責任者は説明してまわったが、ベンガル人は受け入れなかったことを、人口局の局長であるウーミンチャインが言った。

このように自分の思うように調査に回答する権利がない、という問題に関して国際連合を含む国際社会が懸念を表明した。

ミャンマーの安定、発展を損なうため、国勢調査ではロヒンギャという用語を禁止しており、ロヒンギャという用語に関してはミャンマー政府は国勢調査を行う今になって否定したのではなく以前から否定し続けていた非合法的な用語である、という旨を大統領の報道官ウーイェートゥンは言った。

 

②へつづく…